家族殺人、ひきこもり事件の取材について

 先般、東海地方で30歳の長男が父親、姪を殺害、母親らにも重傷を負わせた家族殺しの事件はまだ記憶に新しいことでしょう。事の発端は長男が仕事もせず長年にひきこもり、日夜パソコンに向かってインターネット通販で300万円以上の借金をしていたために父親が相談に行ってネットを止めたのが引き金だったとのことでした。この家族は3人兄弟で、両親、弟、もう一人の弟夫婦と姪、本人の7人で暮らしていたようです。仕事もせずにインターネットに依存して、社会とのつながりを見出していたのでしょうが、一緒に暮らしている親にとっては困った悩ましい息子だったのでしょう。
 この家族の問題は、ネット通販で300万円の借金というだけでなく、父親が働いてきた給料を全部長男に握られ、王様になって家族を自分の支配下に置いていたことと、家を出ていた弟が所帯を持って子どもとともに実家に同居するようになったこと、父親も本人の言いなりならざるを得ない家族関係になっていたことなどでしょう。子どもは大人になったら実家から出て、自立させなければなりません。所帯を持った弟までが実家に戻って同居していたために、幼い姪は命を落とす羽目になってしまい残念なことだと思います。
 週刊女性の編集者から依頼があって、最近の家族間で起こる暴力や殺人、引きこもりは家族はどう対処すればいいのか取材を受けました。日頃から児童虐待、DV,思春期の家庭内暴力などの相談を受けていると、安全であるはずの家庭とその家族が危険な人間関係になっているというのをつくづく感じます。親子の境界も曖昧になって、親が親らしく発言したり、振舞えない現状もあります。子どもが親を支配している状況というのは、今回の事件の家族だけではないでしょう。機能不全家族が増えているのでしょうか。
 5月末に週刊女性(5月11・18日号)が発行されて、私のコメントが紹介されたところ、1日に何回か電話での相談がありました。それも四国、山梨、岩手、愛知などの遠方からの相談で、関東近県からはまったく反応がなかったのが驚きでした。地方では家族問題の相談に乗ってくれるところはないのでしょうか。近ければ相談に来てほしいのですが、電話だけの相談というわけにもいかず、精神保健福祉センターや保健センター、カウンセリング機関を紹介するだけでした。
 また、児童虐待についてもほとんど毎日のように虐待死や障害を受けた新聞記事が目に入ります。どうして虐待死も減らないのでしょうか。通告件数もさらに伸びて、このままでは児童相談所も市区町村の窓口も児童養護施設もパンク状態、お手上げになるのではと心配しています。週刊女性(6月15日号)に再度児童虐待に関する私のコメント記事が掲載されていますので、興味のある方はご覧ください。ホームページに掲載します。
 今年度は、総務省が児童相談所や市区町村で取り組んでいる児童虐待対応の事業評価をすることになっています。どのようなアセスメントが出て、総務大臣の勧告があるのか楽しみです。

2010年5月