母子保健的見立てでは子どもは救えない
母子保健的見立てとはどういうことかというと、母性に視点を当てたアセスメントですが、分かりにくいと思います。先日、ある市のベテラン職員の研修に行ってきました。グループに分かれて事例を基にアセスメントや対応について討議してもらい結果発表する。その報告を受けて、私が助言をするという進め方でした。
皆さんは次のような情報・連絡が来た時どのようにアセスメントしますか?
「4か月児がアトピー様の皮膚のジクジクがあり、受診勧奨したが、両親はアトピーの勉強をしているので拒否、児の自然治癒力を信じている。予防接種も拒否。自宅分娩希望したが病院で出産した」と母子保健推進員が訪問した結果を連絡してきたケースです。これが一次情報。ここでどう判断し、動くかというのが初期介入になります。情報のどのキーワードにアンテナを当て緊急性や医学的判断、虐待の疑いを持つかどうかが大事なのです。初期介入と一次アセスメントですが、グループが発表したのは「第1子なのに、なぜ自宅分娩を希望したのか?」「子どもが可愛いと思っているのか?」など落胆すべき内容でした。これは「母子保健的見立て」ではないかと思います。虐待疑いに視点が当たっていません。ベテラン職員の討議がこの程度ではその後の介入は後手、後手になっていきます。
私は次のように判断します。「4ヶ月児に自然治癒力はない。それを信じている両親の誤った信念はどこからきているのか?受診も予防接種も拒否しているのならネグレクト及び医療ネグレクトも疑われる。新生児訪問はしたのか?基本情報はどの程度あるのか。」そして、すぐ母子保健管理カードや出産病院などから情報を集め、家庭訪問をします。
ところが実際の活動は1か月以上何もせず、小児科医から4ヶ月健診の結果「体重が2か月で700g減っている。浸出液が出て要医療、栄養指導をしてくれ」と電話と健診票が来てから地区担当は訪問をしていました。
なぜ保健センター全体に危機感がないのでしょうか?なぜこのケースは虐待が疑われると認知ができないのでしょうか?なぜすぐ動かないのでしょうか?これだけ子どもの虐待死が相次いでいるのに、保健師は自分たちのかかわり方の問題でもあると思わないのでしょうか?いつまでも親の母性や父性を信じ、受診勧奨、体重測定、栄養指導、母親が信頼している助産師(ホメオパシー勉強中)にその後の訪問は丸投げの対応で終わっていては、行政で働く保健師の専門性や責任性はないと思いました。情けない現状ですね。
話は変わりますが、ある市の事例検討会に行ってきました。新人職員がDVと虐待があるケースと子どもがいて両親共にギャンブル依存がありネグレクトのケースを指導保健師とともに提出しました。新人保健師は前歴があるので全くの学卒ではないのですが、それでもケースと信頼関係が取れて継続してかかわっています。DV時の緊急介入の仕方やギャンブルと借金の問題へのアセスメントや対応の仕方をスーパービジョンしてきました。この市は4ヶ月健診で南多摩保健所の子育てアンケートを活用するようになって、虐待疑いやグレーゾーンが発見されかかわりも深くなってきました。ステップアップしてきたので、「次はアディクションやDVの勉強が必要だね」と話してきました。人材育成は緊急の課題でしょうが、母子保健体制の格差も母子保健的見方に影響していると思います。