看護師の勘

 今月は保健所や市町村の事例検討会に出席する機会が何回もありました。そのなかで印象に残ったのは、医療現場で母親や父親に接しているベテランの看護師さんや助産師さんの「勘」の鋭さでした。周産期の虐待予防の重要性が叫ばれていますが、医療と保健の連携の仕組みはまだまだです。そういうなかで看護師の勘がうまく保健師に伝わらず、子どもが亡くなった事例とか、乳児揺さぶられ症候群(SBS)になって障害児になるかもしれない事例がありました。
 ある事例では、双子の第3子の女児は1800gで医療センターに入院していたのですが、面会に来た母親の様子に違和感があり、「なんとなくおかしい」と看護師は感じたそうです。母親は赤ちゃんを抱っこしない、言わないとタッチもしない、表情も気になるなどです。その違和感を連絡票で保健所と市の保健師に伝えました。保健師が家庭訪問をしてみると、元ヤンキー風のママでリストカットやダイエットのことなど話してくれたし、家の中はきれいだし、体重の伸びも良いし、違和感はなかったということです。しかし、母親は4ヶ月健診の受診後に父親と別居、離婚届を出し、実家の近くにアパートを借りており、転居先で1歳になった女児のお腹を踏みつけ死亡させました。保健師は何を見、何を感じ、アセスメントをしてきたのか、死亡事例を振り返り検証をしました。病院の1か月健診の重要性、未受診の連絡、地区担交代の問題、親の背景などの情報不足や対応不足、アセスメントの未熟さ、4ヶ月健診のあり方など見直していく必要性が話し合われました。
 また、ある事例では、2000gで生まれた男児が入院している病院の助産師は、父親の様子を見て「なんとなくおかしい」と思ったそうです。母体搬送の時、父親は救急車にはすぐに乗らず、「自分は仕事があるから会社に電話してくれ」と言ったり、面会に来ても抱かない、医師が説明をしても質問もないなど、気になる父親だと住所地の保健師に連絡しました。保健師は家庭訪問をして、父親はオムツ交換等手伝っているし、母子関係も良好で、違和感は全くなかったと病院に連絡がありました。しかし1ヶ月後には父親は2か月になった男子を揺さぶって硬膜下血腫などを起こし入院したそうです。病院の乳児健診票の欄に母親は「夜泣きがひどい」と記載していたのを後で気づいたと看護師は言っていました。きちんと外来でもそのことに対応していなかったと反省し、病棟と外来の連携もテコ入れしていかないといけないことや、医療サイドも妊娠中からのハイリスクアセスメント指標を作る必要があると話し合いました。SBSの後遺症で、現在男児は追視もできず、あやしても笑わない、筋緊張も弱く障害児になる危険性も否めないそうです。
 病院で見せた親の態度や言動と、家庭で見せる親の態度や言動の違いはよくあることだと思いますが、危機的場面で見せた親の素顔の違和感を、保健師はもっとしっかりキャッチしてもいいのではないでしょうか。虐待やDV対応で重要なのは、親の訴えはそのまま受け入れるが、親の態度や陳述、言動等に騙されない面接技術やアセスメント力を持たないといけないというのを実感しました。

2009年3月