「代理によるミュンヒハウゼン症候群」から考えること
100年に1度の経済危機といわれ、日本はどこもかしこも冷え切っています。新年を迎えたのに世の中は暗いニュースばかり、国会中継を聞いていても政治家は空論ばかり、この先日本はどうなるのだろう。麻生総理で経済危機から立ち直ることができるのだろうか?
さらに心配なのは、公衆衛生を担う保健師たちはこの先も生き残ることができるのだろうか?日本の母子保健は大丈夫か?東京都庁は組織改正をして「母子保健係」という名前は4月から消えるそうです。母子保健がだんだんと福祉の大波に飲み込まれていっているのが明らかですね。現場は危機感をもっているのかしら?もっていない人も多いでしょう。
私にとって1月はショックな出来事ばかりで、共同作業所すとおりぃを利用していたメンバーが亡くなってしまいました。以前からスタッフと「大丈夫か?」と心配していたのですが、何もお手伝いできないうちに、突然の訃報を聞いて驚くばかりです。とてもすとおりぃを愛してくれ、気にかけてくれました。ありがとう。ご冥福を心より祈ります。
さて、1月は「代理によるミュンヒハウゼン症候群」の事例が、岐阜県で発症しました。マスコミ報道があったので記憶に新しいと思います。児童相談所から質問がきました。
「将来の検証作業に関わることですが、3人の子どもが亡くなり、五女が今回被害にあっています。一人目の死亡の時点から、地元保健師はどう関わることができたのか、今後にどんな教訓を残すべきなのか、という点です。幼児の病死自体が稀有なこと、二人目、三人目はさらに稀有なこと、死因に敗血症があること自体も稀有なこと、それが続いていたことは更に稀有なことなどから、予防的な活動がどうできたのか、どうすべきであったのか?今後問われる気がします。母子保健では、幼児の死亡の情報を得た後、どう対処するのが通常なのだろうか、がいま知りたいところです」
これに母子保健の立場から、保健師としてどう答えていけばいいのでしょうか?
この家族は5人の子どもがいます。長女は13歳で、特に問題もなく元気だそうです。
詳しいことは省きますが、次女は3歳9か月で死亡。3女は2歳3ヶ月で死亡。4女は9か月で死亡。5女は1歳10か月で入院中。
3人の子どもたちが乳幼児期に次々に亡くなっているという事実を、市の母子保健担当は把握していたのでしょうか?把握できる母子健康管理システムになっているのでしょうか?新生児訪問や乳幼児健診がありながら、この事実が把握できていないとすると大変なことです。何のための母子健康管理か分かりません。この家族は乳幼児健診も未受診という情報があります。未受診者対策も取られていなかったのか。また、地区を訪問していると近隣からの情報はなかったのでしょうか?医療機関からも何も連絡や情報は全くなかったのか?これらがすべて「なにもない」ということであれば、市はもとより岐阜県の母子保健対策は根本から見直ししなければなりません。この事例は、保健はかかわっていなかったからでは済まされないでしょう。保健所には「死亡小票」が医療機関から届きます。保健所保健師は、統計を取るためにそれらをチェックすることができます。“不自然な死”に気づけば、児童相談所や保健センターに連絡するなりのことはできたはずです。
代理によるミュンヒハウゼン症候群は、児童虐待の中でもまだ闇の部分が大きいです。発見することも難しく、証拠をあげるのも難しい。さらに親の病理は理解不能のようなところがあります。この事例も母親を精神鑑定する方向ですが、精神疾患ではないと思うし、責任能力はきちんとあるはずです。父親はじめ祖父も母親が意図的にやったというのを理解しようとはしていません。とても育児に熱心で、いい母親だと言いきっています。母親の生育歴はどうなのか?被虐待歴があるのか、ないのか。なぜ、子どもが死んだら、すぐ次の子どもを妊娠し出産していくのか?子どもの死に対する喪失感や罪悪感はないのか?
これらのことから考えると、新生児訪問を全員実施して、その際にEPDS等の産後うつ病スクリーニングをやるのがベターではないかと思います。このスクリーニングは、産後うつだけでなく、赤ちゃんへの愛着度や母親の既往歴、出産歴、子どもの流産や死亡、家族背景などが把握できるアンケートになっています。少しは家族の状況を把握できるし、母親の精神状態も多少は分かるのではないかと思います。医師をはじめとして児童福祉司や保健師なども「代理によるミュンヒハウゼン症候群」について、事例をきちんと研究することが次の発見につながるのではと思います