2008年のブログ
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養育困難とネグレクト

 養育困難とネグレクトはどう違うのか?ある保健センターの事例検討会に行って保健師さんたちから質問されました。保健師が「ネグレクト」と通告したのを、子ども家庭支援センターは「養育困難」だからと受け付けてくれないのだそうです。事例の内容を聞くと、まさにネグレクトと判断すべきなのですが、関係者の間で虐待の認知の齟齬がいまだにあるというのは納得できません。児童相談所の職員に質問しても答えがありませんでした。子ども虐待対応の手引きなどの文献にも明確な答えは見つかりませんでした。でも、これをはっきりさせないと、虐待としての対応が地域でできないことになります。
 私は、次のように現時点では考えています。
 広辞苑では「養育」とは、養い育てること、はぐくむこと、とあります。養育困難とはそれが困難になった状態です。つまり、養い育てる親の方に何らかの問題が生じていたり、育児に手がかかる子どもであったりするときに養育困難になります。例えば、母親が病気になって育児ができなくなった。家出して父親だけでは子育てができなくなった。あるいは、子どもが障害児・多胎児・知的障害児・発達障害児などで、育児に手がかかって育てるのが非常に困難というのが考えられるでしょう。それでも親は子どもの人権を損なうような育児行為はしません。一生懸命に育てる努力をしていると思います。
 ネグレクトの定義は、子どもの心身の正常な発達を妨げるような著しい減食、長時間の放置、その他の保護者としての監護を著しく怠ることです。平成16年の児童虐待防止法改正で、保護者以外の同居人による虐待行為に保護者が適切に対処しないことも加えられました。具体的には、子どもに必要な情緒的な要求に応えていない。食事、住居、衣類などが極端に不適切で、健康状態を損なうような無関心、怠慢、子どもを遺棄することなど。
ネグレクトの範囲は広く、妊娠期・出産時のネグレクトから医療ネグレクトまでさまざまにあります。ネグレクトの親は、子どもの人権を損なうような育児行為をしたり、育てる努力をしていないわけです。どう育てていいのか分からないというのもあるでしょう。
 
養育困難とネグレクトとの違いは次のように判断します。
 虐待(ネグレクト)の判断をするときは、親の意図は関係ないのです。親が若いから、「愛してる」と言っているから、「しつけだ」と言うからというのはまったく関係ありません。子どもの視点や子どもの立場に立ってこの問題を捉えることが重要です。それは、①子どもに必要不可欠なものが与えられていない(食事、清潔、住居、衣服、医療、療育、教育、情緒や言葉など)。②子どもは身体的健康と安全が脅かされている(発育・発達・言葉の遅れ、脱水、肺炎)。③子どもが精神的に危険にさらされ、安全感や安心感が奪われている(無表情、凍りついた目、怯える、見捨てられ感、不安感、しがみつきなど)。この3つの要件が1つでも欠けているときは虐待(ネグレクト)、あるいは虐待の疑いと判断(アセスメント)をすることができます。

 
虐待(ネグレクト)の場合は、子どもに何らかの被害症状が出てきます。養育困難の場合は、子どもには被害症状はそれほど出てきません。よって、養育困難は虐待(ネグレクト)と判断はしませんので、通告しても受理されず、要保護児童対策地域協議会にも計上されないのです。子ども家庭支援センターも、子ども虐待やDVの基本的な知識がないと、子どもは救われないし、保健分野との連携やチームアプローチはできないということです。

2008年1月