小さな相談室を開いて6年半が経ちました。長いような短いような不思議な気分です。この間にギャンブル依存症はもとより、アルコール依存症、薬物依存症、性依存症、摂食障害などなど大勢の依存症者と出会ってきました。
 ぼくは回復プログラムとしていつも5本の柱(1.医学的治療、2.心理教育、3.カウンセリング、4.リハビリテーション、5.相互援助グループ)を提示し、「ぼくがお手伝いできるのは2と3だけです」と言っています。
 アルコール病棟で仕事をしていたことがあるのですが、ぼくにとって幸いだったのは、AAやNAなどのミーティングで沢山の回復者に会い、回復イメージが持てていたことです。ぼくが彼らに「入院中どう自分に関わった援助者が回復の役に立ったのか?」と聞いてみると、返ってきた答えはなぜか同じでした。「鬼軍曹」。「入院中に激しくぶつからなかった援助者のことは覚えていない」と言うのです。「でも鬼軍曹のことは覚えている」と。
 ぼくはここにヒントをもらいました。人間として嫌われるのは困りますが、役割として嫌われることは引き受けよう、とぼくは腹をきめたのです。そして入院患者さんたちにこう言いました。「ぼくの仕事は皆さんが嫌がることをしてもらうことです。納得がいかないことはいくらでも説明します。ですから、後ろから叩いたりはしないでください」。
 そして、「アル中の涙と言葉は信じるな」という教えどおりに、質問も短いものにしたのです。

 Q1:あなたの問題は何ですか?

 Q2:その問題から回復したい願望はありますか?

 Q3:回復するためにはどんな行動でもしますか?

 それでも体の具合が良くなると、詭弁で反論してくる患者さんも少なくありませんでした。中には「あなたの出来ることは提案だけだろう?!」と怒りで瞳をめらめら燃やしながら、ぼくに詰め寄ってきた患者さんもいました。ひとしきり話は聞きましたが、「回復していない時期に提案などしても意味がありません。リハビリ施設に通いなさい」と、ぼくは強要しました。
 好きなことをやって病気になったのなら、嫌いなことをやらなければ回復できないのは当然です。セルフヘルプのミーティングにしても、リハビリ施設にしてもルンルン気分で通う人など、ぼくは見たことがありません。嫌々でいいのです。嫌々通うことから回復は始まるものだと思います。
 毎日のようにパチンコ屋に通っていた人が、週に数回ミーティングに通うだけで回復できるものでしょうか?
 そのことでパチンコが一時的に止まったとしても、なぜ自分がギャンブル依存症にならざるを得なかったのかまで自己洞察するのは難しいと思います。
 リハビリ施設では同じ問題を抱えた仲間と寝食を共にし、回復モデルをみつけてその真似をすることが出来ます。あわてることも、競うこともありません。死ではなく、再生への道を歩む同志との濃密な時間と空間があるのです。そこがギャンブル依存症者のリハビリ施設・ワンデーポートです。

(「ワンデーポート通信」第55号 2005.03 より転載)

2005.5 (吉岡 隆)

第16話 提案は強要の後で

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