
阿野:こころの相談室「リカバリー」の6年間のまとめができたそうですが…
吉岡:ええ、今月の6月1日が開室して6歳の誕生日だったんです。
阿野:6年間を振り返ると、どんな感想ですか?
吉岡:最初の1年目は家賃も払えるか不安で、息子には「お父さん、ぼく大学続けられるの?」なんて心配もかけてしまいました。でも本当に皆さんに支えられて、ここまで来ることが出来ました。6年間も一日一日の積み重ねでしたね。
阿野:この6年間で一番苦労したことは、どんなことですか?
吉岡:苦労というよりも、気をつけていることと言えば、自分の健康管理ですね。相談室を始める1年ほど前の春先に、ぼくは左顔面神経麻痺になってしまったんです。中枢神経麻痺ではなく、末梢神経麻痺なんですが、鏡を見ながら「一生このままかも知れない」と思ったら暗澹たる気持ちになりました。人間、年をとると思いがけない病気になるんですね。
阿野:今は障害が残っていないように見えますが…
吉岡:西洋薬と漢方薬と鍼灸が功を奏して2カ月ほどで回復できたのですが、「その後遺症で左目がタレ目になっちゃいました」と言うと、講義の時に同情的な視線を送ってくる学生もいたりして。右目もタレてるんですから、冗談だと気づいて欲しいんですが。(笑)まあ、笑い話が出来るようになって良かったです。病気から学んだことは、「年をとればとるほどセルフケアをしろ」ということです。自分でやるだけのことをやっていて病気や怪我をしたのなら仕方ありませんが。オーストラリアにロッド・レーバーという往年のテニスプレーヤーがいるんですが、彼は「一日も長くテニスを続けたいからトレーニングをしている」と言っていましたね。むろんセルフケアは身体面と精神面の両方に必要です。
阿野:6年間の統計をとってみて何か特徴的なことはありましたか?
吉岡:この6年間の来談者の実数は407人(男性57%、女性43%)で、延べ人数は4324人でした。来談形態としてはIPの単独来談がほぼ半数を占めています。年齢層は、20代と30代がそれぞれ30%ずつで全体の60%でした。来談経路は、クリニック・病院・保健所・知人友人・リハビリ施設・講演や著書などが皆10%ほどで並んでいます。ここ数年の特徴は、インターネットのホームページを見て来られる方がふえてきたことでしょう。居住地は埼玉県内が74%余りで、どうしても関東地方が中心になりますが、北海道や沖縄県の方にも利用されています。主訴と暫定診断を見ると50%以上が依存症の相談になっています。中でも薬物(ほとんどが覚せい剤)とギャンブルと性への依存症が多く、正しく「飲む・打つ・買う」が三大依存症であることが、ここからもうかがえます。あとは、うつ症状があって精神科クリニックと並行しながら相談に来られている方もいらっしゃいます。「リカバリー」の特徴は、利用条件にも書いていますし、ぼく自身も通っているわけですが、セルフヘルプ・グループに繋がる方が多いということでしょうね。
公務員の頃にはわかりませんでしたが、こんなに大勢の方々が、ご自分の成長や回復のために時間や費用を投資されていることに頭がさがります。クライエントの皆さんから支持していただけることが、ぼくのエネルギーになっています。
阿野:ホームページを作ったのはどうしてですか?
吉岡:ぼくが公開できるものはすべて公開して、その上でクライエントに選んでいただきたいと思ったからです。エッセイを書いているのも、統計的な数値以外の部分で自分のものの考え方や見方を知っていただきたいと思ったからです。なるべく1カ月にひとつくらいは書きたいんですが。
阿野:今後何か考えていることはありますか?
吉岡:ふたつほど考えていることはありますが、もう少しねかせておいた方がいいでしょう。お楽しみに…。これからも時々、こんな対談を阿野さんとしたいですね。いずれにしても、自分の身の丈で今日一日、“One day at a time”です。
2004.6(吉岡 隆)