
98年4月、私は27年間の公務員生活にピリオドを打った。以前から自立の望みはあったのだが、実現するための条件が整わなかった。こう書くと、「自分の意志」だったためで「神の意志」ではなかったからだということが、よくわかる。だから、今は「与えられたもの」だと思っている。
私がこれまでの相談活動の中で学び、これからの活動にいかしてゆけるものは何かを考えた時、4つのサービス・メニューが思い浮かんだ。(1)個別相談(2)心理教育(3)スーパービジョン(4)講義・講演会・研修会の講師である。
この相談室に最も大きな影響を与えたのは、ロビン・ノーウッドである。彼女は、『愛しすぎる女たち』『愛しすぎる女たちからの手紙』の著者としても有名だが、この2冊の本は私の50余年の人生で、最高の2冊になった。
彼女は、これらの本の中でこう語っている。「私もかつては愛しすぎる女の一人であり、これまでの人生の大半を『男性依存症』で苦しんできた。」「セラピストとしても、また個人としても、回復期にある人にとって、サポートグループが持つ価値には計り知れないものがある」と。そして、彼女自身セルフヘルプ・グループのミーティングに参加しており、クライエントにもセルフヘルプ・グループのミーティングに参加することを条件に、セラピーを引き受けている。
セラピストが自分自身を書物という「公の場」で明らかにすることに、私は強い衝撃を受けた。しかしそれは、彼女自身がどれくらいセルフヘルプのプログラムを深めているかを物語っている。
こうして、こころの相談室「リカバリー」は誕生の時を迎えたのである。
幸いなことに、私にはこの27年間にできたネットワークがあり、とりわけ最近10年間にはセルフヘルプ・グループとの繋がりも、より強固なものとなっていた。私一人でできることには限界があり、私の役割はクライエントの抱えている問題整理のお手伝いと、同じ問題を抱えながらも今、回復の道を歩いている「仲間」に出会ってもらうこと、つまりセルフヘルプ・グループへの橋渡しだと思う。
相談室に一人でいて孤独を感じないかと尋ねられることがある。私は特別な宗教に入っていないが、セルフヘルプ・グループでいう「自分を超えた大きな力」は信じるし、神と共にいるという感覚だろうか。
公務員を辞めたことによる打撃は経済的問題だけだった。逆に辞めたことにより得られたものの方が多い。たとえば、異動や業務・地区担当の変更によって、相談関係が物理的に切られてしまう不安はなくなったし、むろん定年もなくなったために安心して相談活動を続けられることである。
また、クライエント・サイドが持てるはずの相談相手を選ぶ権利が、行政区分によって現在は奪われているわけだが、それを本来の形に戻せたし、私は身の丈の仕事量で、質を考えれば良くなったことである。
そして回復や成長のためには、投資を惜しまない人たちがこんなに大勢いるという現実に、私は驚き感動している。同時に、このことは私のセルフエスティーム(本物のプライド)を日々高めてくれている。
来月、この小さな相談室は誕生日を迎える。私はこの4年間、相談室を支えてきてくださったクライエント、援助職仲間そして家族みんなと一緒にハッピー・バースデイを歌いたいと思う。
2002.5(吉岡 隆)